お目にかかったいろいろな「神様」たち


ベトナムは、共産党政権の国であるが、古来からのキン族の大乗仏教、儒教、道教、クメール族の上座部仏教、近代に流入したキリスト教の他にいくつも信仰対象があり、また独自の宗派のカオダイ(高台)教などがある。

 カオダイ教は1926年に「タイニン省を中心におこったベトナムの宗教。信徒数が40万(公称200万)に達したこともある。カオダイ(高台)とは宇宙の至上神である天帝の神殿の名称だが、その神の名でもある。この神殿に設けられた「天眼」とよばれる※巨大な目(ガイドの説明だと心臓に近い方の左目。 私注)がこの神の象徴。教祖レ・ベン・チュン(黎文忠(れいぶんちゅう)(1876―1934)は天帝から・・・啓示を受けてこの宗教を創始したという。至上の神なる天帝は人類救済のため三度にわたってこの世に救世主(メシア)を遣わしたといい、最初は西欧ではモーセ、東洋では釈迦(しゃか)、二度目はイエスと老子、そして最後の三度目に遣わされたのが自分であると主張する。・・・カオダイ教の特徴として、(1)前述の主張にみるように、在来の儒仏道三教などと外来のキリスト教を統合しようとする「統一原理」的な発想、(2)教祖を神が派遣した何回目かの救世主とするメシア思想、などがある。「、第二次世界大戦中、反フランス的立場をとったため植民地当局の弾圧を受けたり(1942)、戦後は、南ベトナムではサイゴン政権と武力抗争をして弾圧されたり(1957)、あるいは解放民族戦線に参加したり、北ベトナムでは他の諸宗教とともに国民議会に代表を送るなど、政治との関係でも注目された。サイゴン陥落(1975)、南北ベトナムの統一(1976)以後は、その一部が反政府運動を指導したため、全体として弾圧されたといわれる。」(引用は『日本大百科全書』「カオダイ教」より)

 この本部がタイニンにある。私はこのような宗教にあまり興味は無いが、ここはよくクチトンネルとセットでツアーが組まれるので、好奇心から、クチの観光後、行って見ることにした。ちょうど行ったとき、信者たちが礼拝し終わるところで、その場面を撮らせてもらったり、皆が退出した後、その「天眼」も撮影させてもらうなど、写真撮影に寛容だった。

 私の見た礼拝は、歌の付いた音楽、太鼓のようなもののリズムに合わせて、座りながら前の「天眼」にむかって一斉に礼を何回かする、というものだった。一般の信者と思しき人々は皆白い服を着ていた。前の方に、赤や青や黄の色の服を着た人が何人かいたが、おそらく幹部であろう。
 


 

奥の青い球体が「天眼」



 フエを中心とした地域で、下の写真のような小さな祠が各家の前に置かれているのを見た。私はタイで同様なものを見たことがあり、タイでは中に老夫婦の人形を土地神として入れて祀り、土地の守護を祈っていることを知った。初めは、タイ人がこの辺に移住して来たものか、と考えていたがフエのかなり多くの家にこれがあり、また中を見られたものには老夫婦人形が無いことが分かり、タイとは似ているが別の形のものだと認識し始めた。ただ、タイのものから類推するに、これらも土地や家の守護を祈るものだと判断した。

  

これらは線香のみを供えているものである。この形式は、土地神や家の守護霊を祀る最も簡素な祠であろう。


この祠には線香のほか、赤地に文字を書いた紙が貼られている。道教では、神名や祈願文を書いた紙(符)が神霊の依代として用いられるが、この祠の形式もそれに近いものと考えられる。


この二つは、前のものは、馬の形をしたものを置いている。馬は、邪気を払う守護の象徴か、武将神の象徴として祀られているものと考えられる。
奥のは金の造花を祀っている。神霊の居場所として奥に置かれたものか。前の守護の祠と、奥の神の依る祠、と分化したものではないか。


 まとめると、これらの祠はタイのものとは内容も異なり、その由来もおそらくベトナム固有の土地神信仰や道教的要素に基づく別系統のものだと考えられる。しかし、家の前に置く小さな祠という外見はタイの祠と似ており、土地神を祀り、家や敷地を守ってもらうという信仰の目的においては、よく似た役割を果たしているように思われる。残念ながら、これらの祠について日本語で体系的に研究した資料は見当たらず、ここで述べた内容はあくまで現地での観察と類推に基づく私の推測である。

 一方、ホーチミン市や南部では、フエのものとは違って、下のように、老人像と布袋のような腹の出た像、願文を書いたような紙が箱に入れられて、床に置かれて祀られていると感じた。特にレストランに入ったときよく見られた。

これは、チェビン省のアンビン寺院(クメール人の上座部仏教寺院)に行く途中の食堂で見かけたもの。


 サイト「ダナンが好き」の「ベトナムの『ビジネス』」・『台所』・『出産』の3つの神様」によると、「thần tài(タン タイ)はお金や商売繁盛の神様、ông địa(オン ディア)は土地を守ってくれる神様として知られています。ông địa(オン ディア)とthần tài(タン タイ)は二人セットで自宅やお店、会社などに飾られていることが多く、生活の中でも身近なベトナムの神様。中国の『五方五土龍神』、『前後地主財神』という文字が入った紙(碑)が同じ仏壇には飾られていることもあり、中国文化を強く引き継いだものであることも伺えます。とはいえ厳密に仏教徒の神様、道教の神様、などと決まっているわけではなく、日本でいうと『七福神』のような感覚で、ベトナム全土で多くの人に信仰されています。」とある。上の写真だと、向かって右がタン タイ、左がオン ディア を人形で表したものであろう。後の赤地には、「金枝初發葉  五方五土龍神 前後地主財神 銀樹正開花」とあり、「商売が芽を出し、※五方(東西南北と中央)の土地神と龍神に守られ、前後の地主神と財神が加護を与え、財運が大きく花開きますように。」つまり、商売繁盛・土地の守護・財運上昇を願う総合的な祈願文として神棚に掲げられている。

 以上、ベトナムの宗教、信仰する神々は地域によっても複雑であり、まだまだ様々なものがあるようだ。


  


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